ドキュメンタリー映画「神の子たち」
Documentary Film "God's Children"

作品紹介

「忘れられた子供たち/スカベンジャー」完成から6年.....

マニラ市の西の巨大なゴミ捨て場”スモーキーマウンテン”は、1995年11月にフィリピン政府によって強制撤去されるまでの約40年間、アジア最大のスラムと言われてきました。ゴミを生活の糧にしていた人々の一部は今回の舞台となるパヤタスゴミ捨て場へと移り住みました。
現在パヤタスゴミ捨て場は第二の”スモーキーマウンテン”と呼ばれています。
2000年7月に起きたパヤタスゴミ捨て場崩落事故に始まり、極めて困難な生活環境のゴミ捨て場で生活する3家族を軸に、日本人が忘れてしまった「家族の絆」「生きる誇り」の大切さを描きました。
事故が原因でゴミ捨て場が閉鎖され、ゴミ捨て場に住む人々は4カ月の間、生活の糧を失ったにも関わらず、胸を張って正々堂々と生き続けていく。様々な問題を抱えるなか生まれる新しい生命、そして死。

映画主人公の1人、ニーニャと家族たち

映画主人公の1人、ニーニャと家族たち

「貧困とは?」「家族とは?」「生と死」等の様々な問題を投げかけると共に、子供たちの成長過程や、家族や仲間との絆を通して、人間の理想や希望、私たちの生き方そのものを問い直す映画作品です。
ひとりでも多くの日本の若者や子供たちにこの映画を見て現実を追体験してもらい、認識を新たにするきっかけにできればと願っています。

撮影の動機

現在1作目の舞台となり、40年以上にわたり続いたマニラ市にあったゴミ捨て場”スモーキーマウンテン”は95年11月にフィリピン政府により”貧困の象徴”との理由で完全に閉鎖した。その後、今までスモーキーマウンテンに捨てていたゴミは、ケソン市のパヤスタゴミ捨て場に捨てられ始めた。(フィリピンでは大気汚染法によりゴミの焼却は禁止されている)
監督の四ノ宮はこのマニラから20km離れたケソン市のパヤスタゴミ捨て場を取材中、障害を持った子供たちが多く生まれている事に気付いた(200例以上)。
映画主人公の1人、アレックス君と家族

映画主人公の1人、アレックス君と家族

ある水頭症の赤ん坊に触れることすら出来なかった四ノ宮とは対照的に、赤ん坊の家族は惜しみない愛情を赤ん坊に注いでいる姿に衝撃を受け、撮影を決意。
しかし、実際一緒に障害を持つ子供たちと暮らし始めると、”障害を持っている”という感覚がなくなっていく自分に気がつき、当初は”障害を持つ子供を撮って、この悲惨さを伝えよう”という思いが先行していたが、それは、いかに日本人的な考え方かを反省した。
”たまたま障害を持って生まれてきた”だけであって、それ以上でも、それ以下でもない。
むしろ、彼らはそんな境遇にもかかわらず、「家族の絆」を重んじ、ひたむきに生きている。
こうした姿に感動した四ノ宮は、新たな気持ちで撮影を開始する事になった。
四ノ宮は言う、「ゴミ捨て場に住む人々の悲惨さを伝えたいんじゃない。ここで胸を張って暮らす人々や家族の姿を伝えたいんだ!」と。 この作品は、日本人が失ってしまった家族の絆や家族愛を映し出し、生きるとは?本当の幸せとは?を強く考えさせられる映画である。

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思わぬ事故との遭遇

クランクイン直後に思わぬ出来事がおこった。
2000年7月3日からケソン市に台風による大雨が降り続き、撮影は1週間中断せざるを得なかった。
そして雨が止み、ようやく撮影ができるようになった矢先の7月10日、事故は起こった。大雨の影響で地盤が緩み、ゴミの山が崩れ落ちて、住民達の住居が下敷きになったのだ。この事故で出た死者は1000人以上だといわれている。 (戸籍登録していない人が多く、正確な数は現在もわからないままである。)
事故現場 1 事故現場 2

事故現場の様子

事故発生から5日後、政府は事故の再発を恐れ、パヤタスゴミ捨て場へのゴミの搬入を中止した。ゴミ拾いの仕事を生活手段としている彼らにとってこれは死活問題となってしまった。

カメラはゴミの搬入が再開され、日常の生活に戻るまでの6ヶ月間の住民たちの生活、心の状態を克明に追った。

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四ノ宮が体験した崩落事故

大変な事が起こりました。
今朝撮影しにパヤタスゴミ捨て場に行くとゴミ捨て場の斜面が崩れ、住民登録している家族だけで200家族が(住民登録していない家族 は相当いると思われます)生き埋めになっていた。おそらく一週間の間降り続いた 豪雨が影響しているのだろう。

事故現場 3
僕たち撮影チームは今日一日中、その現場の撮影をして今日だけでかなりの数の死体を見た。
お母さんと赤ちゃんの死体や黒焦げの死体、多くの知り合いが死んでしまった。

今朝、僕たち撮影チームは一人のスタッフの遅刻から出発が遅れた。
それが幸いした。
僕たちは今朝崩れたゴミ捨て場で撮影する予定だったのだ。あと一時間早くゴミ捨て場に到着していたらこの天災に巻きこまれていたかもしれない。
今思うとぞっとする。

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監督:四ノ宮浩 撮影:瓜生敏彦 整音:久保田幸雄 音楽:加藤登紀子
2001年/日本映画/35mm(16mm)/カラー/スタンダード/105分

2002年シネマアンビエンテ国際環境映画祭 グランプリ受賞作品
2002年 ベルリン国際映画祭正式招待作品 2002年 モントリオール国際映画祭正式招待作品 他

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