ドキュメンタリー映画「神の子たち」
Documentary Film "God's Children"

あらすじ

アジア最大のスラムと呼ばれてきたマニラ市の北の巨大なゴミ捨て場"スモーキーマウンテン"が、1995年11月にフィリピン政府により強制撤去された。
ここでゴミ拾いを生活の糧としていた人々の一部は、この映画の舞台となるマニラ市に隣接するケソン市パヤタスゴミ捨て場へと移り住んだ。ここは第2の"スモーキーマウンテン"と呼ばれていた。現在、パヤタスゴミ捨て場には大小2つのゴミ捨て場があり、3500世帯が住んでいる。

崩落事故の様子

崩落事故 写真

2000年7月2日、映画がクランクインされたが翌日より1週間雨が降り続いた。
7月10日パヤタスの大きなゴミ捨て場で大規模な崩落事故が起きた。この崩落事故により500世帯1000人に及ぶ犠牲者が出たといわれている。

事故発生5日後、フィリピン政府はゴミ捨て場を閉鎖。ゴミの搬入が止められた。ゴミ捨て場に住む人々は、生活の糧を失うこととなった。 住民たちはフィリピン議会前までデモを始めた。
デモに参加した妊娠中のノーラ(27歳)は「私たちのゴミ捨て場を再開して欲しい」と言った。

ノーラ一家の食事

ノーラ一家の食事

ノーラ一家は崩落事故に遭ってない小さなゴミ捨て場のふもとの家に夫フォーシン(46歳)娘マルセル(6歳)と住んでいる。ゴミの来ない小さなゴミ捨て場で毎日ゴミを拾いつづけていたが、ほとんど拾えず、夕飯は僅かばかりのご飯と塩だった。

1ヶ月後、崩落現場が自然発火し、村全体がまだ掘り起こされていない死体の死臭で覆い尽くされた。

ニーニャ

ニーニャ

ニーニャ(12歳)の家は大小2つのゴミ山の中間にあり、両親と4人の兄弟と一緒に2年前に田舎からゴミ捨て場にやって来た。「今はゴミが来なくなったので、お金を稼げず大変で、最近魚や肉は口にしていません。」とニーニャは言った。彼女ら一家は食べ物が無くなると、ゴミ山の斜面に植えた芋を掘り、食べていた。また、彼女は庭先に芋の葉を植えることにした。
「私は泥棒するぐらいだったら、飢え死にする方がましです。」彼女の口から言葉が発せられた。

アレックス君

アレックス君

もう1人の映画の主人公アレックス君(5歳)は、寝たきりの水頭症で母、父と二人の妹とゴミ山に住んでいた。アレックス一家もゴミ捨て場に生きる住民同様、その日その日の食料を、ある日は近所の家から米カップ2杯をわけてもらい、ある日は久々にもらった寄付を頼りにして生き延びていた。アレックスの父がふと、言葉をもらした。「飯が何もない時に近所の家からトタン屋根を盗み、それを売って、家族に飯を食わせた事がある」と。

ノーラは出産の日を迎えた。数日後の早朝、ノーラは破水して病院に行くことになった。8月7日PM9:00、ノーラは男の子を出産したが、未熟児だった。生後6日目、血を吐くノーラの子、神に祈るノーラ。しかし家族の願い空しく、ノーラの子は天へと旅立ってしまった。
3ヵ月後、ニーニャの父が出稼ぎに行く事になった。しかし仕事はなく、すぐ戻ってきてしまう。ニーニャも親戚のいる別のゴミ捨て場に働きに行く事になった。

ゴミの到着

ゴミの到着

11月8日、ついに小さなゴミ捨て場にゴミが戻ってきた。ゴミの到着を歓声をもって迎える住民たち。
撮影した3家族(ニーニャ一家、ノーラ一家、アレックス一家)の誇り高き、耐えに耐えた4ヶ月間の家族の肖像画で映画は終わる。

この作品は様々な問題を抱えるなか生まれる新しい生命、そして死。そうした過酷な環境の中にありながらも、誇りを失わず、逞しく堂々と生きる住民たちの姿を克明に捉えたドキュメンタリー映画である。

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監督:四ノ宮浩 撮影:瓜生敏彦 整音:久保田幸雄 音楽:加藤登紀子
2001年/日本映画/35mm(16mm)/カラー/スタンダード/105分

2002年シネマアンビエンテ国際環境映画祭 グランプリ受賞作品
2002年 ベルリン国際映画祭正式招待作品 2002年 モントリオール国際映画祭正式招待作品 他

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